高円寺グッドマン

今日は高円寺グッドマンでSOLOだった。

思えばデンマークから帰国してSOLOのオファーが此れだけなんである。俺はどんだけ人望がないんだよ。

鈴木美紀子さんからのお誘いだったのだが「ソロで40分」と言う。だが、TPと言う楽器は40分もSOLOが出来る楽器ではない。

特殊な奏法を使って演奏する人もいるのだが、トランペットと言う楽器の奏法に既に『特殊な奏法』がスタンダードな奏法として組み込まれている。

JAZZで多い『ハーマン・ミュート』だが、マイルス・デイビスが多用して有名になったが、マイルス・デイビスは当初は普通のハーマン・ミュートではなくて、スウィング系が使っていたミュートを使っていた(チャーリー・パーカーのバンドに居た頃)。

そもそも、トランペットにミュートを装着する、って言う事自体が『プリペアド』なんだよな。だから、トランペットと言う楽器はジョン・ケージプリペアド・ピアノを発明する以前からプリペアド。

なにしろミュートなんて17世紀の宮廷音楽家が練習用として使っていた位、古いんだもの。

アクセル・ドゥナーみたいな奏法はさておき(奏法と言えるのか)基本的にトランペットの奏法は特殊、スタンダードも含めてルイ・アームストロングで完成しているし、ルイ・アームストロングがやってない事はトランペットでは不可能な事である。

電気TPと言う方法もあるが、残された部分は其のくらい。だが、TPを電化するのは泣けるほど大変。

帝王マイルスがピックアップをTPに装着していたが、あれを装着すると『電気TPの為の奏法』を作らなきゃならないんだよな。

で、ですよ。

トランペットって肉体への依存度が凄まじく、なおかつ疲労度が桁外れなので「一人で40分」は正直、不可能である。

此れは「私のレベルじゃ無理っすよ」と言うモノではなくて技術的、キャリア的、知名度、収入面でTOPのプロでも30分が限界。

だから、JAZZとかは『フルに吹く』を薄めて(其のために特殊な奏法がある)、1時間のステージならば30分を分割して(思いっきり吹くのは10分だけ、とか)・・・と涙ぐましい。

「トランペットで40分間は不可能です」

とメールして

?ソロ→10分

?鈴木美紀子さんのステージ

?デュオ→30分

と言う編成にした。ディオと言っても鈴木さんとではなく森下さんにお願いした。で、プールで泳ぎながら考えついた曲があるので、其れをヤることに。

「楽譜を送ってくれ」

と言うので送る。其れが此れ。

TP二人で延々とB♭とFをロングトーンで出すだけ。ピストンは一切、押さない。

要するにユニゾンなのだが、ユニゾンと言っても管楽器の特性として「ピッチが狂いやすい」と言うのがある。

管が熱を持ってピッチが上がったりするし、そもそも人力なので延々と442hzは出せない。

多分、クラシックの連中でも無理だと思う。

そうする事でユニゾンの音が揺れる。

『音の揺れ』

と言うのがやりたい、と思った。

トニー・コントラッドが好きだったが、彼の場合は音は揺れてない。揺らす為にはユニゾンであり、ユニゾンで揺らす事はミニマルではない。

残響と言うか音響系みたいなモンだが、アイデアは別にあってグレゴリオ聖歌以前の声楽である。

オペラが登場するまで声楽と言うのは一人が歌うのではなく『大勢』で歌うものだった。声楽だけで数十人いる事が当たり前だったらしい。

『ドミソ』

と言う音を出すだけで3人。『ド』と言う音は基本的にドミソだが、ドミソシでも良いので、そうすると4人。

つまりピアノの鍵盤を人力でやっているようなもんだ。

だが、歌いまくるのではなく石造りの建物なので当時の人は歌声と言うよりも『残響』『音の響き』を楽しんでいたらしい。

そもそも、数十人もの声楽隊では歌詞は聞き取れなかっただろうし。

音は揺れただろう。

その揺れが心地よかったんだと思う。

音は揺れなくてはならない、と思う。

だが、こう言う譜面とコンセプトを理解してくれるトランペット奏者は森下さんしか居ないのである。

一応、『現代曲』『現代音楽』のつもりで作っているので、演奏者のエゴは不要である。そして、其れを理解して貰う為には現代音楽への素養がある人・・・と言うことで森下さん。

当初はソプラノ・サックスとかアルト・サックスとかギターでも良いかな・・・?と思ったのだが『揺れる音』を堪能する為には音色は揃えたい。

ってか、森下さんも私も使っている楽器のメーカーが違うから音色は同一にはならないのだが。

シツコイほどの告知が効いたのか高円寺グッドマンとしては異例の10人もの客が来た。普段、3人でも多いグッドマンなので10人は『超満員』である。

鎌田さんが忙しそうにしている姿を10年ぶりに観た。

20時10分に開始する予定が集客が多かったので20分押しでスタート。

最初は私のソロ。ディレイを使って。アンプはギターアンプに接続(グッドマンはPAが使えない)。

ディレイはデジタル・ディレイを使った為、フーガとかカノンみたいで面白かった。基本的には

『普段通りに即興演奏』

と言うか。奇を衒った演奏には限界があるし、「普通に吹く」と言う事の方が美しい気がするから。

初めてグッドマンで『自分らしい演奏』が出来た気がする。伊達に40年も生きているワケじゃないんだなぁと思った。

次は鈴木美紀子さん。

最後は森下さんとのディオ。最初の10分のソロで唇が辛かったが予想以上に上手く行った。個人的にも良かったし、観客の反応も良かった。

しかし、疲れた・・・・。

この日の為にトレーニングだとか、色々と思案したり、悶々としたりしていたので「やっと、終わった・・・」と言うか。

観客が多かったので(普段、1〜3人のハコで10人である)ギャラが出た。一人、2500円。森下さんにもちゃんと渡せたので良かった。

疲れた・・・・。

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